【ぶった斬り中古車試乗記】スズキ アルトターボRS

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スズキ アルトRS

第2回

スズキ アルトターボRS

(2015年式 HA36S 5AGS)

ぶった斬り試乗記シリーズについて

このシリーズは中古車販売店を実家に持つ私が、新旧ジャンル関係なく気になったクルマを遠慮なくレビューする試乗レポートです!

第2回はスズキ アルトターボRSに試乗してきました!

現行軽自動車クラス最軽量級のボディにターボエンジンを引っさげたスズキの意欲作。

デビュー当初話題となった5速AGSミッションについても掘り下げていきたいと思います!

いきなりド偏見総評

走りのキビキビ度 ☆☆☆
唯一無二度 ☆☆☆☆
軽スポーツとしての演出度 ☆☆☆
走りへの変態レベルのこだわり度 ☆☆☆☆☆

一言で表すと…「玄人志向の快速スポーツツアラー」

【外装】懐かしさと流行のフュージョンした個性派デザイン

スズキ アルトターボRSはスズキ自動車のベストセラー「スズキ アルト」8代目の高出力スポーティグレードとして2015年にデビューしました。

どこか懐かしさと独特の雰囲気を持つアルトのボディ。スズキが過去に販売していた「フロンテ」などを彷彿させるデザインだ。


8代目アルトといえば、登場時にはノスタルジックかつ斬新なデザインが大きな話題となりました。これは過去のスズキ車をオマージュしたものです。一方アルトターボRSの外装に目を向けると、スポーティな専用デザインの前後バンパーやリアスポイラー、サイドスカートなどのエアロや所々に入れられたレッドの差し色など2015年の販売当時の流行を盛り込んでいるのが分かります。

バンパー下やミラーなどに赤いアクセントが入るのは近年(2010年代後半頃~)のトレンドだ。


「ノスタルジー」と「トレンド」、この相反する2つの要素を上手く融合することで他と被らない独自性とインパクトのあるルックスを実現しています。
正直なところ高級感という点ではあと一歩といったところ。しかしアルトという車の性格上そこはあまり重要視される部分ではありませんし、裏を返せば若々しく軽快感のあるデザインという見方も出来るでしょう。少なくとも私は好きです。またこの個体はオプションのセンターストライプがあしらわれており、これもまたヤンチャさを加えてカッコかわいい印象をアップさせています!

【内装】しっかり広く基本に忠実。シートの仕立ての良さが光る。

乗り込むとまず感じるのは空間の広さ。ボディ上部の絞り込みが少なくスクエアな車体形状のおかげもあって、頭まわりの空間はかなり開放感があります

あくまでもベーシックな造形のインパネ周り。派手さはないが使いやすく、機器の追加カスタムもしやすそう。

インパネに関してはエアコン吹き出し口やメーター周りの赤い差し色と専用のホワイトメーターが特徴ですが、各部の形状自体は通常のアルトと大差ありません。派手目の外装に対してスポーティさの演出という点ではあと一歩控えめな気もします。しかし逆に言えば、このシンプルさを活かして追加メーターを配置するなど、クルマ好きが自分好みに仕上げる余地があるという見方もできます。また元が実用車の設計ということもあり、使い勝手の良さは間違いないものとなっています。

ここにも赤い差し色が。このシートの出来が絶妙にイイ♪写真で伝わらないのがもどかしい!

そしてシートは前後共に、ブラックをベースに赤いステッチ(縫い目)と細いストライプの入ったスポーティな見た目。外装と共通イメージのレッドの差し色をすることで車内外の統一感を演出しています。座ってみると座面は柔らかくもコシのある適切な硬さをもち、形状も特に腰をしっかり支えるように作られているので非常に優秀な座り心地です。これはイイ!

気になって調べたところ、ベースとなる通常グレードのアルトのシートと比較して

  1. 座面および背もたれ形状の適正化による身体への負担軽減
  2. サイドサポート(出っ張っている)部分に硬めのウレタン素材を使用しホールド性の向上
  3. 座面幅、座面長、背もたれ幅を1センチずつ拡大しゆとりを持たせている

大きくこの3つの点が改良されているようです。

実際にこれらの改良の効果はてきめんで、通常グレードのアルトが近所で乗る下駄的なシートなのに対し、アルトターボRSのそれは200キロ程度のロングドライブでも楽にこなせそうな印象でした♪

限られた開発コストの中でも、車の中で最も触れる部分かつ重要な部品であるシートをしっかりと仕立て上げたことは、スズキの良心と言って間違いないでしょう。

【メカニズム】軽の概念を大きく超える名エンジンと個性の光る新感覚トランスミッション

「アルトターボRS」の看板が示す通り、搭載されるエンジンは3気筒ターボのR06A型。これが実に素晴らしい出来!アクセルを踏めば即座に欲しいだけのパワーを発揮し、またエンジンの音質も心地よくノイズや振動は最小限。軽自動車のイメージを覆すレベルに仕上がっています。

名機R06A型エンジン。汎用機ながら見えない部分にアルトターボRS専用のチューニングが施されている。

スズキの現行軽自動車のターボエンジンは全てこのR06A型ですが、アルトターボRSに搭載するにあたりターボチャージャーとシリンダーヘッドを新設計し、従来型よりも低中速域トルクの向上とターボラグ(アクセルを踏んでターボが効き始めるまでのタイムラグ)の改善を達成しています。

加えてこのアルトターボRSの車重は驚きの670kg!ボディ形状が異なるとはいえ、ほぼ同等のエンジンスペックを持つ2020年現在流行の軽ハイトワゴン(N-BOXやタント、スペーシアなど)がおおよそ900㎏から1000㎏弱であることを考えるとその軽量さがお分かりいただけるでしょうか。ボディの軽さは動力性能と燃費向上に直結します。

余裕のパワーを持つエンジンと現行軽自動車最軽量級ボディの組み合わせのお陰で、軽自動車ながら走行性能は1300㏄クラスの乗用車を超える仕上がりと断言していいでしょう。ハッキリ言って速いです。

そしてアルトターボRSのもう一つのトピックと言えば5速AGS(オートギアシフト)ミッション。これは一言でいうと「ロボットがクラッチとシフト操作をしてくれるマニュアルミッション」です。

大前提として自動車には「オートマチックトランスミッション(AT)」「マニュアルトランスミッション(MT)」が存在することは誰もが知るところかと思います。構造上の説明は非常に長くなってしまうので今回は割愛しますが(機会があれば解説記事も作る予定)、この2つの特徴をざっくりまとめると

ATは「自動変速で運転は楽だが、動力伝達効率の改善やそれに伴う多段変速化が構造上難しい」

MTは「操作は煩雑だが、動力伝達効率に優れ燃費が良く、シンプルな構造で多段化もしやすい」

という、二律背反的なものとなっています。この2つのいいとこ取りを目論んで作られた「自動変速で運転の楽なマニュアルトランスミッション」5速AGSというわけです。

実際に乗ってみると確かにその目論見は成功しており、エンジンパワーをしっかりとタイヤへ伝えるダイレクト感や、変速段の多さによる様々なシーンでの走行性能の高さなどMTの美点を存分に引き継いだものとなっています。

実は昨今のモータースポーツ界やスーパーカーなどにおいて主流はクラッチ操作不要の2ペダルMTであり、かの有名な「日産 GT‐R」も同様です。スズキのAGSミッションは簡素とはいえ、システムの大枠は同じといってよい方式。これだけでもクルマ好きとしてはかなり心をくすぐられます!

AGSの構造自体はマニュアルトランスミッションそのものですが、自動変速なのでAT限定免許で運転できます。操作も通常のオートマチック車と全く同じで、シフトレバーをDレンジに入れてアクセルを踏めば走ります。

しかし走らせている時の感覚に関しては通常のオートマチック車とは結構異なっており、どちらかというとマニュアル車に近いものとなっています。この辺りについては次項で触れてきたいと思います。

【乗り味】引き締まった「良い意味での硬さ」と独特の加速フィール

アルトターボRSの純正サスペンションにはKYB社製のスポーツダンパーが装備されています。走らせてみると路面を掴む感触が分かりやすく、ハンドリングも非常に素直で直感的に狙ったラインを走れる印象。軽自動車だから……という掛け値一切なしに本当に気持ちいい走りで思わずニッコリ!快適性を確保しながらもしっかり硬さを残したセッティングで、少々ハードなスポーツ走行でも充分応えてくれそうです。

また、固めたサスペンションをしっかり活かしきるためにボディの溶接スポット増しストラットタワーバー(サスペンション付け根の左右を繋ぐ補強部品)など多岐にわたるボディ補強が行われています。そのおかげで運動性能のみならず、ボディの軋みが少ないので高速走行時の快適性も非常に高い仕上がりとなっているのが好印象でした!

AGSミッションのシフトレバー。一見普通のATと大差ないが中身は別物。

そして前項で技術面に触れたAGSミッションですが、乗った感想をあえて誤解を恐れずに言うなら

「クセが強ぇ!」

その乗り味や揺れの質はまさにマニュアル車そのもの。機械が「クラッチを切る→シフトチェンジする→クラッチをつなぐ」という変速操作を行うため、一般的なオートマチック車とは違う独特の「間合い」が存在するのが特徴です。

正直なところ、オートマチック車しか乗ったことのない人の場合、最初は戸惑うかと思います。アルトターボRSをスムーズに走らせるにはある程度の「慣れ」が必要です。コツとしては一般的なオートマチック車よりもメリハリを付けてアクセルを踏み、変速のタイミングを意識してアクセルを緩めてやると上手く走れるかと思います。実は私も最初はギクシャクしてました。

パドルシフトが装備されている。コレを使って走るのが気持ちイイ!

しかし慣れてしまえばこっちのもの。通常のATでは絶対に得られないギアの直結感から来るスポーティな走りを存分に堪能できます。また、マニュアルモードとパドルシフトを装備しているので、純粋な2ペダルマニュアル車としてスポーツ走行を楽しむことも可能!この楽しさは他の軽自動車にはない唯一無二のものと言えるでしょう。

ネット上ではしばしば「スズキのAGSはもたついて乗りづらい」という声を耳にしますが、それは恐らく一般的なオートマチック車の乗り方をしているせいだと思われます。万人が乗る軽自動車というジャンルにおいて、あえて「乗りこなす」必要のあるシステムを投入してくる辺りがなんともバイク屋気質のスズキらしい……と妙に納得する部分でもありますねw

【まとめ】

キッチュなルックスとベーシックな実用性からは想像もつかないほど本格スポーツな本性を秘めたアルトターボRS。

スズキ車は価格のお手頃さがしばしば美点として挙げられますが、このアルトターボRSはカスタム用のアフターパーツとしても人気の高いKYB社製スポーツダンパーや、手の込んだボディ補強の数々など「目には見えないが走行性能において非常に重要な部分」に重点的にコストを掛けている印象を受けました。

スズキの職人気質がたっぷり詰まった唯一無二の一台。「軽自動車」を甘く見てきた人にこそ是非一度乗って体感してみて欲しいと思います!

🚗今回試乗した車両はこちら↓

掲載終了 | クルマ・中古車 Goo-net

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